金地金で資産運用をするときには現物取引が良いか、プール共有型金商品が良いか迷ってしまう方もいるでしょう。
どちらも金地金の売買によって資産運用ができるのは同じだからです。ただ、現物とプール共有型には違いがたくさんあります。
この記事では金地金の現物とプール共有型金商品の違いをまとめました。
それぞれの金資産がどのような人におすすめかも解説するので、金による資産運用に興味を持っている方はぜひ参考にしてください。
目次
金地金の現物とプール共有型金商品とは
金による資産運用では金地金の現物を購入する方法と、プール共有型金商品を利用する方法があります。
どちらも金地金を所有できるという点では同じですが、取引の仕組みに違いがあります。
まずは現物とプール共有型の概要を確認しておきましょう。
金地金の現物
金地金の現物取引はインゴットなどと呼ばれる金塊を購入・売却する方法です。
1キログラムや500グラムといった重量単位で製錬されている金塊を購入して、資産として所有します。
売却するときにも1個単位での取引になります。金地金による資産運用で最も古くからおこなわれている方法です。
プール共有型金商品
金地金のプール共有型金商品はサービスの提供業者がプールとして保有している金地金の一部の所有権を購入・売却する方法です。
金塊を丸ごと購入する必要はなく、1キログラムの金塊の50グラムだけを購入するといった取引ができます。
売却時には購入時に発行された金証書単位での取引になります。50グラムを買った場合には50グラムの金地金を売却することが可能です。
グラム数または金額を指定して購入できるので、自由度が高い金地金の取引方法として注目されています。
金地金の現物とプール共有型金商品の違い
基本的な仕組みが異なるため、金地金の現物とプール共有型金商品には違いが多数生じています。
ここでは金地金で資産運用をする人の視点から気になるポイントを取り上げて、現物とプール共有型の違いをまとめました。
資産運用方法を選ぶときには重要なポイントばかりなので、詳しく確認しておきましょう。
プール共有型は金地金を部分的に所有できる
プール共有型金商品では金地金を部分的に所有できるので、丸ごと購入しなくて良いのが現物取引との違いです。
国際標準としては1キログラムまたは500グラムの金塊が製造されています。
しかし、500グラムも買うのは心配だから、25グラムだけ買いたいというときもあるでしょう。
プール共有型ならグラム単位で購入できるので、25グラムでも24グラムでも手に入れることが可能です。
現物は少量購入では購入手数料がかかる
金地金の現物取引でも少量購入に対応している業者があります。精錬技術を持っている非鉄金属メーカーでは国際標準の品位の金塊を製錬しています。
最小で5グラムから購入できるため、25グラムといった少量の金地金を現物として購入することが可能です。
ただ、現物取引で少量購入をすると購入手数料がかかります。
金地金100gの購入手数料 | |
---|---|
田中貴金属工業 | 16,500円 |
三菱マテリアル | 8,250円 |
楽天証券 | 購入代金×1.65% |
SBI証券 | 購入代金×1.65% |
マネックス証券 | 購入代金×1.65% |
金の製錬をするためにコストがかかっているので、手数料を請求せざるを得ないのです。
プール共有型の場合には少量だからといって追加的に手数料がかかることはありません。
プール共有型は少額から購入できる
プール共有型金商品と現物では購入できる金額範囲が違います。プール共有型の方が少額から購入できます。
1グラム単位で購入できるため、1万円あれば金地金を所有することが可能です。
上限額については取引先の業者が保有している金地金の量に依存するので、プール共有型か現物取引かによる違いはありません。
プール共有型には少額から始めやすい点でメリットがあります。
プール共有型は金額の自由度が高い
プール共有型と現物取引では金額の自由度に違いがあります。現物取引では金塊単位での購入になるため、最小で5グラム単位での取引です。
購入手数料がかからないようにするには500グラム単位で購入する必要があります。
しかし、プール共有型ではグラムあるいは金額で購入量を決められるのが特徴です。
資産運用の自由度ではプール共有型の取引が優れています。
現物はインゴットを受け取って鑑賞できる
金地金を現物で取引するとインゴットを受け取れるので鑑賞して楽しむことができます。
プール共有型の取引ではサービスの提供業者が金を保管するのが原則です。手元でインゴットを眺めて愛でることはできません。
美しいインゴットが手に入ったら嬉しい気持ちに駆られてリビングや寝室に飾りたいと思う人も多いでしょう。この場合には現物取引を選ばざるを得ません。
現物は受け取りに手数料がかかる
金地金の現物取引とプール共有型の取引では金を受け取る手数料に違いがあります。
現物取引の場合には原則として金を受け取らなければならないため、受取手数料や送料の支払いが必要です。
業者 | 受取手数料 | 送料 |
---|---|---|
SBI証券 | 配送費に含まれます。 | ニューヨークからの配送費 |
楽天証券 | 100g/本:5,500円 | 2,200円 |
マネックス証券 | 100g/本:6,600円 | 2,200円 |
店頭で受け取る場合には無料で対応している業者もありますが、店舗が近くにないと時間も費用もかかってしまうので注意しましょう。
プール共有型の場合には金地金の現物を受け取らないので余計な手数料はかかりません。
現物は保管料がかかることが多い
金地金の現物取引をしたときに、インゴットを受け取らないと保管料がかかることがあります。
現物取引ではインゴットを受け取ることを想定しているからです。業者によって対応が違い、保管料がかからない業者もありますが、そもそも保管に対応していない業者もあります。
インゴットを受け取った場合にも銀行などに預けると保管料がかかります。
保管サービス料金の目安 | |
---|---|
三井住友銀行 | 11,000円~23,100円 |
三菱UFJ銀行 | 16,170円~29,700円 |
田中貴金属 | 5,500円 |
一方、プール共有型金商品の場合には業者が保管するのを前提にしているため、保管料は無料なのが一般的です。
保管料は金を長期保有すると大きな金額になるので注意が必要です。
プール共有型は保管リスクが低い
プール共有型と現物では保管リスクに違いがあります。プール共有型の場合には金証書の発行してもらいます。
金証書はどのインゴットのどのくらいの割合を所有しているかを示す書類です。
金証書記載内容 | |
---|---|
記載内容 | ・購入日 |
プール共有型金商品では金証書をオンライン発行していて、盗難や紛失のリスクがありません。保管リスクが低い金地金の取引方法です。
現物取引をして業者にそのまま預かってもらう場合には保管リスクは同じです。しかし、現物を受け取った場合には盗難や紛失のリスクがあります。
盗難リスクは常に気を払う必要があり、耐火金庫を購入して保管しているケースもあります。
ただ、耐火金庫ごと盗まれるケースもあるので、安全な保管方法を検討しなければならないのが現物取引です。
一般的には保管料を支払って銀行や専門業者に預かってもらう方法が選ばれています。
現物は買取価格が高い業者に売却できる
金地金の現物を購入する場合とプール共有型の取引をする場合では売却できる業者に違いがあります。
金地金の現物を購入した場合には、どの業者にでも買い取ってもらうことが可能です。
買取価格を比較して高く売れる業者を選び出すと、資産運用による利益が大きくなるでしょう。
金の買取価格は市場価格による影響が大きいですが、買取業者がどのくらいのマージンを設けているかによって買取価格には違いが生じます。
金の買取価格 | |
---|---|
SBI証券 | 7,908円/g |
楽天証券 | 7,899円/g |
マネックス証券 | 7,890円/g |
※2022年11月18日9:00時点での価格です。
高く売れる業者に売却する自由があるのが現物取引の特徴です。
一方、プール共有型は購入した業者にしか売却できないのが原則です。業者が持っている金地金のプールの一部を所有する仕組みになっているからです。
現物を引き渡してもらわない限りは他の業者に売ることはできません。
どの買取業者に売るかを考える必要がなく、売買の手間がかからないのはメリットですが、比較検討して高く売りたいときにはデメリットになります。
プール共有型は流動性が高い
現物取引とプール共有型の取引では流動性に違いがあります。一般的に金は購入・売却のどちらもおこないやすい傾向があります。
ただ、現物取引の場合には業者がインゴットの在庫を切らしてしまうと買えません。売りたいと思ったときにも在庫が増えすぎていると買取価格が下がってしまうリスクがあります。
しかし、プール共有型は一定の量の金を保有している業者が、利用者間でうまく融通して所有できるように工夫をしています。
希望のタイミングで妥当な金額での売買ができるのが特徴です。
また、プール共有型はインターネット経由での注文が一般的で、24時間対応をしています。
たった今の相場に基づいて買いたい・売りたいといった希望も叶えられます。現物取引の場合には業者の営業時間によって違いがあり、一般的には昼間しか取引できません。
時間軸で考えてもプール共有型金商品の方が流動性が高くて取引しやすい性質を持っています。
プール共有型は消費税がかからない
金地金の現物を購入・売却するのとは違い、プール共有型金商品では消費税がかかりません。
消費税はもともと商品を販売した業者が納める税金ですが、購入者に請求するのが標準的になっています。
消費税の納税義務者 | |
---|---|
消費者 | 事業者 |
ただ、購入者に請求してはならないという法律がないので業者が購入者に消費税を請求しているだけです。
業者が消費税を負担しても何も問題はありません。プール共有型金商品では消費税を請求せずに取引するのが一般的になっています。
厳密に言えば、プール共有型の金地金の場合には、業者から買った金地金を必ず同じ業者に売ります。
標準的な消費税の仕組みで考えると、購入時に消費税を支払う代わりに、売却時には消費税を請求することになります。
取引のときに消費税のやり取りをするわずらわしさをなくし、わかりやすい取引をできるようにしているのがプール共有型の金地金です。
現物取引の場合には現物を引き渡した時点で他の業者に売られてしまうリスクが発生します。そのため、業者から現物を受け取るときには消費税を請求されます。
現物取引とプール共有型の取引はどちらがおすすめか
金地金の現物とプール共有型金商品の違いを比較すると、どちらを選んだとしてもメリット・デメリットがあることがわかります。
現物もプール共有型金商品も運用することももちろんできますが、一方だけ選びたい場合にはどちらにしたら良いのでしょうか。
ここでは現物とプール共有型金商品のおすすめの人を簡単にまとめたので参考にしてください。
金地金の現物取引がおすすめの人
金地金の現物を選ぶのがおすすめなのは以下のような人です。
金地金の現物取引がおすすめの人
- 金地金の現物を手元に置きたい人
- 金の売却の方法を自由に決めたい人
- 数百万円以上の資金をまとめて運用したい人
現物取引をするとインゴットを手元に置いて鑑賞できるのがプール共有型金商品との決定的な違いです。
現物を保管する手間と負担はありますが、売却のときには自由に売り方を決められるメリットもあります。
500グラム未満の金地金では購入手数料がかかるので、数百万円単位での投資をしたい人に向いています。
プール共有型金商品がおすすめの人
プール共有型金商品がおすすめなのは以下のような人です。
プール共有型金商品がおすすめの人
- 金地金の現物を預けたまま運用したい人
- 手数料を抑えて効率的に投資したい人
- 少額から金額を自由に決めて運用したい人
プール共有型金商品は金地金の現物を手元に置かずにリスク回避をしたい人に適しています。
保管料込みでの取引で消費税や受取手数料などもかからないことから資金効率が高くてわかりやすい投資をしたい人にもおすすめです。
また、金地金を少額から始められるのもプール共有型金商品のメリットなので、気軽に金資産の運用尾始めたい人も向いているでしょう。
まとめ
金地金の現物とプール型金商品の違いは、インゴットを1個単位で購入するか、業者がプールしている金地金の一部の所有権を購入するかです。
現物の場合にはインゴットを手元に置いて飾れる魅力がある反面、盗難リスクや保管コストを考慮しなければなりません。
プール型金商品の場合には業者が保管するのが前提になっているので安全に運用できます。
現物取引とプール型金商品の取引では手数料や購入最低金額などにも違いがあります。
総じて見ると現物を手元に置きたいという強い要望がない限りは、プール型金商品の方が始めやすくて流動性も高く、手数料などのわずらわしさもないのでおすすめです。
これから初めて金資産の運用をしたいと持っている方はプール型金商品から始めてはいかがでしょうか。
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