2023/01/30

有事の金とは

有事の金とは

金は投資の時代になってニュースでもよく話題に上るようになりました。有事の金とは資産運用をしているとよく目にする言葉ですが、どのような意味がご存じでしょうか。

有事の金の意味を正しく理解することは、金による資産運用をする上で重要です。この記事では有事の金の意味や由来を解説します。

有事の金という考え方は50年以上前に生まれましたが、現在でも通用するのでしょうか。有事の金についての理解を深めた上で、今でも有用な示唆があるのかどうかを見ていきましょう。

有事の金とは

有事の金とはわかりやすく言うと「世界的に危険や不安、混乱などが広まったときには、資産を金にしておくのが良い」という意味です。

有事とは緊急事態や非常事態のことで、戦争や紛争、パンデミックや自然災害、経済的な混乱などを指します。

有事になったときには日本円や米ドルなどの通貨の価値が大きく変動することが多いため、資産価値が一気に低下してしまうリスクがあります。

このような際にも資産を金にしておけば安全だというのが有事の金の考え方です。

有事の金の由来

有事の金という言葉の由来には諸説ありますが、1970年代のアメリカ合衆国とソビエト連邦の冷戦時代に生まれたという説が有力です。

冷戦時代にはいつアメリカとソビエトの間で戦争が勃発し、第三次世界大戦になるかどうかを誰もが不安に思っていました。

緊張状態が長らく続いていたため、資産家は現金や有価証券などの金融資産の価値が失われるのを懸念して現物資産の金にして資産を守る動きが強まりました。

冷戦という世界を揺るがした有事に金を大量購入してリスクヘッジをしたというエピソードから「有事の金」あるいは「有事の金買い」という言葉が生まれたと言われています。

有事の金買いの事例

言葉が生まれると前例に倣って「有事の金買い」をしようという傾向が生まれやすくなります。

冷戦以前にも有事に備えて金を買う資産家はいましたが、冷戦以降は「有事の金」という言葉が広まった影響で世界的に有事の金買いが進められるようになりました。

例えば、1980年に勃発したイランイラク戦争によって第二次オイルショックが起こった際には、200ドルに満たなかった金価格が一時的に700ドルを超えています。

平均価格 最高価格 最低価格
1978年

193.31ドル

243.65ドル

165.70ドル

1979年

307.41ドル

524.00ドル

216.55ドル

1980年

612.13ドル

850.00ドル

474.00ドル

1981年

459.87ドル

599.25ドル

391.25ドル

また、2008年のリーマンショックを引き金として起きた4年にわたる金価格の上昇は有名です。

2008年時点で900ドルほどだった金価格が2012年には1800ドル近くまで上昇しました。

平均価格 最高価格 最低価格
2008年

872.17ドル

1,023.50ドル

692.50ドル

2009年

973.01ドル

1,218.25ドル

810.00ドル

2010年

1,225.60ドル

1,426.00ドル

1,052.25ドル

2011年

1,572.34ドル

1,896.50ドル

1,316.00ドル

2012年

1,668.86ドル

1,791.75ドル

1,537.50ドル

リーマンショック以降も2020年の新型コロナウイルスによるパンデミックや、2022年のロシアのウクライナ侵攻などによって有事の金買いが起こって相場が上がっています。

有事の金として信頼されている理由

有事の金として金の資産価値が信頼されているのは安全性が高いからです。

世界が非常事態になったときに金を買う傾向が強いのは、単純に「有事の金」の事例が過去に多いことだけが理由ではありません。

金の性質から資産として信頼されている理由を確認しておきましょう。

金融政策や為替変動の影響を受けないから

金が「有事の金」として注目されているのは、各国の金融政策や為替変動などの影響を基本的に受けない資産だからです。

国家によって価値が保証されている法定通貨とは異なり、金は現物としての資産価値があります。

ポイント

金は市場で取引されているので通貨ベースでの価値は変動しますが、金そのものが持っている価値は変わりません。

金は装飾品としても電気電子部品としても普遍的な価値が認められているため、安全資産として信頼されています。

物理的に不変の価値があるから

金以外にも現物資産としての価値がある商品は多数あります。原油やトウモロコシなどは商品先物取引による資産運用ではよく用いられていますが、資産として保有するには適していません。

原油は危険物倉庫を用意するなどの管理の負担が大きく、トウモロコシは長持ちしないという問題があるからです。

金は法規制によって保管方法を指定されていることはなく、物理的にも錆びや破損などのリスクがない貴金属です。

金は金属の中でも最も安定性が高い性質を持っているので、安定資産として選ばれています。

今後の金投資で重要な視点

有事のときに金を資産として持つのは、金の性質を考えても合理的だと言えます。

ただ、有事の金の考え方は半世紀ほど前に生まれたものなので、今でも通用するのかは疑問に思う人もいるでしょう。

有事になるとインフレの発生や株価の暴落が起こるリスクがあります。そのリスクヘッジとして有事の金を買おうと考える人も多いでしょう。

ポイント

金はインフレヘッジ資産として優れているのは明らかで、インフレ対策として保有するには効果的です。

ただ、株式投資のリスクヘッジとしてはあまり効果がないと言われるようになってきました。株価と金価格の相反性が失われてきているからです。

このような状況を加味して、今後の金投資で重要な視点を見ていきましょう。

有事に備えて金を保有しておく

戦争やパンデミックなどが起こると、有事の金と考えた資産家や投資家が金を買います。

結果として金価格は上昇するため、有事に気付いてから買うと高い価格で買い付けることになってしまうので注意しましょう。

ポイント

有事に備えて金はあらかじめ保有しておくのがおすすめです。

緊急事態になって「有事の金買い」が起こり、金の価格が上昇した後、状況が収束しそうだとわかった時点で金を売れば大きな資産形成になります。

有事は予測が難しいので、直前に金を買って運用するのは困難です。有事の金買いが起こる世の中になったことを踏まえて、非常事態に備えて金を保有しておきましょう。

安全性の高い方法で保管する

金をあらかじめ購入しておく場合には保管方法を検討する必要があります。

ポイント

金は現物資産なので、盗まれないように管理するのが大切です。

有事を狙って短期投資をする場合にはリスクが低いですが、長期的な視野で投資をすると盗難されるリスクが高くなります。

安全性の高い金庫に預けて保管するのが最も安心です。世界的に認められている金庫サービスを利用して貴重な資産を守りましょう。

リスク分散の視点で少額購入から始める

有事に備えて金を買っておけば、世界を揺るがすような問題が発生したときに大きな資産形成になる可能性があります。

ただ、資産をすべて金にしてしまうのにもリスクがあるので注意しましょう。有事にならなければ金の相場は大きく変動することがありません。

ポイント

リスク分散を目的として、資産の一部を金にするのが合理的でしょう。

資産があまりない場合でも金の現物は1万円程度から購入できるので心配ありません。

資産状況に応じて買い増しをしたり、一部を売却したりして運用するのがおすすめです。

まとめ

有事の金の考え方は冷戦以降、資産家や投資家の間に根強く残っています。金が普遍的な価値を持っている安定資産だからこそ、今でも非常事態に頼れる資産として活用されています。

有事になると金を買う人が増えるので価値が上がるのは過去の事例からも明らかです。有事に備えてあらかじめ金を保有しておき、必要に応じて売却するのが今後の資産運用で重要でしょう。

金は地金や金貨として持つこともできますが、保管管理や流動性に不安が生じがちです。プール型金商品を利用すれば安心で少額での購入も簡単です。

金による資産運用をしていく際にはプール型金商品をぜひご活用ください。