汎用型人工知能(AGI)は投資や金融だけでなく経済や社会においても脅威になっています。AGIを有益な形で活用すれば従来のAIと同様に便利で安心の暮らしを支えてくれると期待されますが、使い方によっては悪影響を及ぼすリスクがあるのはAIと同じです。
まだAGIについて聞いたことがあるだけでAIとの違いがわからない人もいるでしょう。この記事ではAGIについてAIやANIとの違いを説明します。
AI時代におけるAGIの投資への影響やリスクについても考察していますので参考にしてください。
目次
汎用人工知能(AGI)とは
AGI(Artificial General Intelligence)とは「人」と同じようにさまざまな環境や状況に置かれたときに、適切な判断をして行動できる人工知能(AI)です。AGIは汎用性があるのが特徴で、大きな変化があっても必要なことを学習してより良い方法を導き出すことができます。
特化型人工知能(ANI)との違い
AGIの登場に伴ってよく使われるようになったキーワードにANI(Artificial Narrow Intelligence)があります。ANIは特化型人工知能で、今まで実用化されてきたAIは基本的にANIに該当します。畳み込みニューラルネットワークなどによって学習させるAIのほとんどはANIです。この記事ではANI=従来のAIとして説明します。
AGIはAIとは異なる特徴を持っているため、今後の社会や投資に大きな影響を及ぼすと考えられています。AGIとAIの違いを特徴づけるポイントは以下の4つです。
学習方法
アルゴリズムとしては学習方法に根本的な違いがあります。今まで実用化されてきたAIでは学習データを人が用意してAIに学ばせるというプロセスが必要です。同じアルゴリズムを使用したとしても、学習させるデータによってインプットに対するアウトプットの内容は変わります。アルゴリズムの構築だけでなく、インプットするデータの品質によって精度が変わる性質があります。
一方、AGIでは初期の学習データのインプットは必要ですが、後は自分で学習を続けていきます。必要なデータを探索して学習していくことが可能です。これまでの学習結果を使ってさらに深化するアルゴリズムにできる可能性もあるでしょう。AGIでは学習方法が基本的にお仕着せではなく、AIがアクティブに学習していくシステムになっています。
AGIは学習結果を使ってさらに深化するアルゴリズムにできる可能性がある
タスクの範囲
AGIは汎用性、AI(ANI)は特化型と区別されていることからもイメージできるように、AGIとAIでは処理できるタスクの範囲が異なります。AIでは特定のタスクに特化したデータを与えて学習させるため、そのタスクの処理しかできません。
画像認証や生体認証のように、特化されたデータのインプットを分析して正答を導き出すというタスクに優れているAIがよく実用化されています。
しかし、既存のAIでは顔認証ができるシステムで音声認証をすることはできません。AGIでは「認証」を課題として自発的に学習させることで両対応できる可能性があります。一つのAIで複数のタスクに対応できるようになるのがAGIの特徴です。
処理の柔軟性
AGIは処理の柔軟性があります。既存のAIはあくまで人が設計した通りにタスクを実行する際にデータを総合的に活用できるだけです。AGIの場合には今まで見たこともないような問題が発生したときにも、必要な情報を自ら学習して解決方法を見出します。
既存の枠組みにとらわれずにタスクに対応できるのがAGIの優れている点です。
意思決定の可否
AGIは柔軟性があり、経験を生かした対応ができます。何を学習すべきか、学習したデータを考慮すべきかといった意思決定ができるのが従来のAIと異なる点です。人と同じように自分の判断が存在するので、意思決定のためのシステムとしてAGIを利用することもできます。
AIをツールとして使用して意思決定の参考にする時代から、AGIが判断を下す時代になる可能性があります。
AGIの確立によって投資業界が受ける影響・リスク
AGIの技術が確立されると投資や金融には大きな影響があります。リスクを伴う変革が起こる可能性もあるので、どのようなことが起こり得るのかを知っておきましょう。
証券や外貨による投資のAGI化
AGIを活用できるようになると投資のAGI化が進められます。フィンテックの中にAGIが取り込まれていくと考えられます。株式や債券、外貨などのデータは遥か昔から蓄積されています。各国の金融政策や要人の発言などのデータもインターネットを通じて確認できるため、AGIが学習すると状況に合わせた最善の資産運用ができるでしょう。
証券や外貨による投資がAGI化されて新しいフィンテックサービスが登場し、ロボアドバイザー投資のように利用されていく可能性があります。
投資のAGI化によりフィンテックの中にAGIが取り込まれ、リスクを伴う可能性もある
ロボアドバイザー投資のリスク
投資顧問や証券会社の地位の揺らぎ
AGIによる投資が進むと投資顧問や証券会社の地位が揺らぐリスクがあります。投資顧問会社がアドバイスをするよりも、AGIによるアドバイスを受けた方が良いということになる可能性があるからです。AGI時代の到来は投資サービスの構造を変えるくらいのインパクトがあります。証券会社で投資信託を選ぶよりも、AGIに分散投資を任せた方が良いという時代が到来する可能性もあります。
投資資産の価値の変化
AGIが確立されると投資資産の価値が今とは違う状況になるでしょう。証券や通貨のようにビッグデータに基づいて価値変化を予測できる資産はAGIによって自動的に取引される傾向が強まります。すると、過去のデータとは異なる値動きをするようになるリスクも高く、今までよりもボラティリティが上がる可能性があります。AGIの登場によって投資市場は全体的にボラティリティが上がるリスクがあるでしょう。投資資産の価値変動も考慮したポートフォリオの検討が重要になります。
AGI時代に向けて考えるべき投資方針
AI時代からAGI時代に向かう中で投資はどのような方針を立てると良いのでしょうか。ここではAGIの到来を見据えて、投資による資産運用を進めるために重要なポイントを解説します。
ポートフォリオの拡大
資産のポートフォリオを広げて投資をすることは重要です。AGIが登場して金融や投資で用いられるようになると、各々の資産についてAGIが学習していきます。国内株式、米国債、金、原油といった個々の資産に特化したAIではなく、総合的に判断して相場の変動を予測できるAGIが生まれる可能性があるでしょう。
AGIが投資に使われると自動投資が非常に速いスピードでおこなわれるようになります。すると、過去とは異なる取引も頻発するようになり、市場が不安定になるリスクがあります。ポートフォリオを拡大して複数の資産を持つと、特定の資産の価値が不安定になったとしても資産を失うリスクを最小限に抑えることが可能です。
AGI時代になると今はリスクヘッジと言われている資産がリスクヘッジにならなるリスクもあります。裏をかく投資行動が自動で活発に進められる可能性があるからです。リスクヘッジも当面は重要ですが、中長期的にはポートフォリオの拡大を考えることが安全策です。
流動性の高い安全資産の保有
まだ不透明なAGIの到来に備えるには、資産の安全性を重視してAGI時代に備える投資方針をおすすめします。AGIがいつどのような形で登場し、市場を動かす役者となるかは現在では予測できません。
市場が不安定になったときに、すぐに資産を動かせる資産を保有しましょう。流動性が高い資産の中でも安全資産を選ぶとさらに価値変動の不安を減らせます。金などの貴金属はモノとしての価値に不変性があるのでおすすめです。
金地金は流動性が低いことが問題になりますが、プール共有型金資産であればいつでも簡単に売買できます。AGIに備える資産の一つとして、プール共有型金資産をポートフォリオに組み込みましょう。
まとめ
AGIはさまざまなタスクに対応可能なAIで自ら学べるシステムを持っているのが特徴です。
投資や金融ではビッグデータを人よりも迅速に学んで分析し、意思決定ができる可能性があるAIなので脅威と言えるでしょう。AGIが登場すると投資サービスの構造に変革が起こる可能性があります。
規制によるコントロールが実施される可能性もありますが、現状としては不透明です。AGIの時代が到来することを考慮し、ポートフォリオを広げて安全性の高い資産を取り入れるようにしましょう。
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