2024/03/28

全銀ネットのシステム障害を受けて考えるべき今後の資産運用

全銀ネットのシステム障害を受けて考えるべき今後の資産運用

全銀ネットは2023年10月10日から11日にかけて大きなシステム障害を起こしました。2023年末に向かう時期に起きた日本での金融トラブルの中では最も大きなものでした。

全銀ネットのシステム障害は日本の金融を揺るがす事件だったのは事実です。全銀システムの障害発生について冷静に理解し、今後の資産運用について考えることは誰にとっても重要です。

この記事では全銀ネットのシステム障害から考えるべきリスクと、今後の資産運用の考え方を解説します。

全銀ネットのシステム障害の概要

全銀ネット(全国銀行資金決済ネットワーク)は全国銀行内国為替制度に加盟している金融機関のオンライン取引に用いられている金融インフラです。NTTデータに管理委託をして運営されているシステムで、1973年に導入されてから安定した稼働を続けてきていました。

しかし、2023年10月10日から11日にかけて初めてのシステム障害を起こし、三菱UFJ銀行やりそな銀行などの10行で取引ができない状況になりました。このシステム障害によって影響を受けた顧客は566万人、この期間中に未処理になった取引数が102万件に上っています。

NTTデータの調査ではOSを32ビットから64ビットにバージョンアップした際にトラブルがあったという見解になっています。システムがダウンしてから2日以内には改善したとはいえ、このシステム障害によって大きな打撃を受けた個人・企業も多いでしょう。

安心かつ信頼と思われていた全銀ネットだからこそ、重大な責任が問われています。

全銀ネットのシステム障害による懸念

信頼を保ってきた全銀ネットのシステムで障害が発生したことを受けて、システムの利用について懸念を持つべきということがわかります。

ITシステムによってインフラが作られている現代ではどのような点に注意したら良いのでしょうか。

中央集権型システムのリスク

全銀ネットのような中央集権型システムでは、システム障害が起きたときにサービスが利用できなくなるリスクがあることは理解が必要です。システムメンテナンスでも利用が一時停止になりますが、システムダウンになるといつ復旧するかがわかりません。

特に全銀ネットの事例では預金は安全、送金は銀行振込が確実という考えが崩壊したとも言えるでしょう。

みずほ銀行の事例を考慮する必要性

金融関連では全銀ネットだけでなく、みずほ銀行でも2021年にシステム障害を起こして金融庁から業務改善命令を受けていました。2024年1月19日に定期報告義務が解除されています。

このような事例が近々にあったにもかかわらず、全銀ネットがシステム障害を起こしたのは金融業界全体として危機感をあまり持っていなかったことを示唆しています。

サイバー攻撃による障害リスク

中央集権型の金融システムはネットワークを介して利用するため、サイバー攻撃に対する強固なセキュリティ対策が為されていることが不可欠です。ただ、ハッカーは既存のセキュリティリスクの重箱の隅を突いてサイバー攻撃をしようと必死に企みます。

いたちごっこになっている面もあるので、サイバー攻撃によって大きなシステム障害が発生するリスクは常にあります。

注意

全銀ネットなら安心といった権威にすがる考え方は決して安全とは言えない点に注意しましょう。

サードパーティによるリスクの拡大

全銀ネットのシステム障害に限ったことではなく、中央集権型の金融システムではサードパーティによる影響を大きく受けます。中央集権型の金融システムではサードパーティを利用して運営しているのが一般的です。

全銀ネットの場合にもNTTデータに管理委託をしていましたが、もしシステム障害が起きた時点でNTTデータが倒産していた、あるいはサイバー攻撃を受けて自社存続の危機に陥っていたりしたとしたらどうなったでしょうか。システムの復旧ができなくなった可能性が高いでしょう。

注意

サードパーティがサービスを停止したり、サイバー攻撃を受けたりすることで利用できなくなるリスクがある点には留意が必要です。

中央集権型金融から分散型金融に切り替えるリスク

中央集権型の金融システムのリスクを考えると、分散型金融(Decentralized Finance, DeFi)に切り替えるのが良いと考えられます。

ただ、DeFiによる分散型の金融モデルは必ずしも課題を完璧に解決しているわけではありません。中央集権型から分散型に切り替えるリスクを押さえておきましょう。

分散型金融のセキュリティリスク

分散型金融はブロックチェーンによって維持されていて、スマートコントラクトによる取引がおこなわれています。ブロックチェーンの情報の改ざん自体は高度なセキュリティが保たれているので心配はありません。

しかし、スマートコントラクトなどの基盤プログラムにバグがあったり、脆弱性を突いてハッキングがおこなわれたりすると資金が失われるリスクがあります。

ネットワーク障害のリスク

分散型金融にはネットワーク障害のリスクがあります。分散型金融でよく用いられているイーサリアムでも2023年5月に30分程度のネットワーク障害が発生して取引ができない状況が発生しました。

ソラナでも2024年2月にパフォーマンスの大幅な低下を伴う障害が発生しています。分散型金融に依存するとネットワーク障害が起きたときに取引できずに困るリスクがあります。

ガス代の高騰リスク

分散型金融ではブロックチェーン上での取引によってガス代が発生します。ガス代は手数料のことで、多くのネットワークでは多かれ少なかれ取引ごとにガス代の支払いが必要です。

ガス代は年々高騰している状況があります。分散型金融にこだわると取引の度に資金が目減りしてしまうリスクがあります。

全銀ネットのシステム障害から考えるべき今後の資産運用

全銀ネットのシステム障害や分散型金融のリスクから、今後の資産運用をどう考えるべきなのでしょうか。

資産の安全性を保ちながらリスクの低い運用をするための基本を確認しておきましょう。

預金は安全という考えは捨てる

銀行に預金をしておけば安心という考え方は捨てた方が良いでしょう。全銀ネットのシステム障害からわかるように、いつ利用できなくなるかがわからない状況があります。

安全性が比較的高い資産になるのは確かですが、全資産を銀行に預けるのは安全とは言えません。ポートフォリオを広げて複数の資産に分散させることが効果的な対策です。

現金に頼らない資産でリスクヘッジする

資産を分散させるときには現金に依存しない資産をポートフォリオに入れましょう。債券のように現金価値と紐づいている資産ばかり持っていると、インフレによって現金の価値が低下したときに資産が減ることになります。

ポイント

現金とは異なる価値変動を起こす資産を保有するとリスクヘッジになります。インフレ対策には金やプラチナ、不動産などが有効です。

デフレになると資産価値が下がりますが、代わりに現金価値が上がるので、トータルで資産を維持できます。

安全資産を優先する

現金は国が倒れない限りは安全資産です。銀行預金しか持っていなかった人は資産の安全性を重視したいと思っていたのではないでしょうか。

株式や債券、投資信託などの証券は価値変動によって大損をするリスクがあります。資産が大きく減るリスクを避けたいなら安全資産でリスクヘッジをしましょう。

ポイント

金は世界的に有名な安全資産です。価値が持続的に向上してきた歴史もあるので、ポートフォリオに組み込むと安全性の高い資産運用ができるでしょう。

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まとめ

全銀ネットのシステム障害は金融について考え方を改めさせられるほどのインパクトのある事件でした。同様のトラブルが起きるリスクを考慮して資産運用のあり方を考えましょう。

今後は現金資産を銀行に預けておけば安心と考えずに、できるだけ安全なポートフォリオの資産を保有することが重要です。

中央集権型とは異なる分散型金融も魅力的な資産の一つですが、セキュリティリスクやガス代の高騰リスクなどの問題も抱えています。安定価値のある現物資産もポートフォリオに入れて安全な資産運用を検討しましょう。