2023/07/21

米国Apple社の預金サービスがもたらす資産運用への影響

米国Apple社の預金サービスがもたらす資産運用への影響

米国Apple銀行が高金利の預金サービスを開始して大きな話題になりました。米国でのサービスとして始められましたが、グローバルにサービスを提供しているApple社なので日本にもサービスを始める可能性はゼロではないでしょう。

もし日本にApple社の預金サービスが入ってきたらどのような影響があるのでしょうか。Apple銀行の日本進出による今後の資産運用への影響について詳しく解説します。

Apple社の高金利銀行サービスの衝撃

Apple社がApple銀行でフィンテックサービスを提供するという発表を受けて世界に衝撃が走りました。

世界最大のシェアを持つスマートフォンのiPhoneを手掛け、Microsoft社のWindowsと並ぶMacを開発してシェアを集めているIT企業のApple社が金融業界に参入したという時点で大きなインパクトがあります。AmazonやGoogleなどの大手でもまだ見られていなかった取り組みだからです。

Appleブランドが世界にさらに広まる可能性が切り開かれたのは確かでしょう。ただ、世界に衝撃が走ったのはApple銀行が高金利サービスを提供すると発表したことも理由でした。

年率4.15%の普通預金金利でスタート

2023年4月17日にサービスを開始したApple銀行では普通預金の金利が年率4.15%でした。当時の米国銀行における平均的な普通預金金利は0.5%前後だったので、8倍くらいの差があります。

銀行 金利
Marcus

0.50%

Ally Bank

0.50%

ゆうちょ銀行

0.001%

みずほ銀行

0.001%

三菱UFJ銀行

0.001%

楽天銀行

0.02%

日本では0.001%がメガバンクでは標準的なので、4,000倍以上の差があることになります。もちろん、アメリカにも普通預金を高金利にしている銀行はありますが、日本と同じでメガバンクでは普通預金金利は低めです。

その中で知名度が高い大企業のApple社が銀行サービスを始め、圧倒的な金利で口座開設を募集し始めたとなると衝撃が走るのは当然でしょう。

ゴールドマン・サックス・バンクUSAが管理

Apple社は米国で銀行サービスを提供するためのライセンスを持っていません。Apple銀行は米国の金融大手として有名なゴールドマン・サックスとの提携によって実現されています。

平たく言えば、ゴールドマン・サックスの支店に口座が作られて、管理はゴールドマン・サックスが担当します。顧客の窓口としてApple銀行が機能するという仕組みのビジネスモデルです。

Appleとゴールドマン・サックスの大ブランドが提携して生み出された信頼性のあるサービスという点でもインパクトがありました。

開始から1週間ほどで10億ドルを超過

Apple銀行は開始からたった1週間で10億ドルに到達する預金総額になりました。金利が良いだけでなく、アプリで最短30秒で口座開設できる迅速サービスも提供しているため、消費者にとっても敷居が低いサービスなのも大きな理由でしょう。

Appleカードを持っているiPhoneユーザーというのが条件になりますが、ソーシャルセキュリティーナンバーなどの基本情報を入力するだけで簡単に口座を開設できます。

ポイント

口座維持手数料や最低預金金額もないので気軽に開設できる銀行サービスになっています。

金利の良さと口座の開設しやすさを両立させたことでAppleユーザーがすぐに資金移動をしたと言えるでしょう。

プロモーション後も3.00%の年率を維持

金利4.15%というのはサービス開始時点でのプロモーションで、すぐに金利が下がるのではないかと思った人もいるでしょう。

確かにApple銀行では当初から金利を下げていて、2023年7月時点では3.00%になっています。当初よりは下がっていますが、米国の平均的な普通預金金利の0.5%に比べると6倍の水準です。

一度、口座開設をして資金移動をした消費者が他に資金を移すほどの理由にはならないでしょう。当初に比べて金利の魅力はやや下がったのは確かですが、高金利で信頼できる普通預金としての地位を保ち続けています。

Apple銀行が日本に上陸する影響

Apple銀行は日本ではまだ利用できないサービスです。しかし、グローバルビジネスを展開しているApple社なので、日本の銀行と提携してApple銀行のサービスを提供し始める可能性もゼロではありません。

Apple銀行がもし日本に上陸したらどのような影響があるのでしょうか。

普通預金による資産運用の増加

Apple銀行が日本にサービスを開始したら、米国での動向と同様に普通預金の資金移動が活発に起こるのは明らかでしょう。

ポイント

投資よりも普通預金で資産を運用した方が良いという考え方も広まる可能性があります。当初の金利であれば4.15%で投資リスクがありません。

利回りが5%の投資でリスクを抱えながら運用するのとどちらが良いかと考えると、Apple銀行の普通預金を取る人も多いでしょう。資産運用はApple銀行に預けるのが良いという認識が生まれる可能性が高いと言わざるを得ません。

他銀行からの大きな資金移動

米国で実績を上げてからApple銀行が日本に進出する流れになるため、大きな資金移動が起こりやすくなります。FacebookやGoogleなどの大手が銀行サービスの取り組みに成功しなかった過去もあるため、Apple社が銀行サービスを提供してもすぐに破綻するのではないかという不安がありました。

それでも1週間で10億ドルもの資金が動き、その後も利用者は増えています。安全で信頼があると考えられる基盤ができてきたと考えられるため、投資をしていた人だけでなく、普通預金や定期預金をしていた人もApple銀行に資金を移動させるでしょう。

地方銀行・証券会社の経営不振

メガバンクでは資金力があるので大きな資金移動に耐えられるかもしれません。しかし、地方銀行で大々的に預金が引き出されてしまったら経営破綻になるリスクがあります。

証券会社も同様で、投資をやめてApple銀行に資金を動かす人が増えると経営が厳しくなります。つまり、Apple銀行の日本上陸は金融業界の構造を揺るがすことになる衝撃的な事件になりかねません。

金融不安の発生

銀行や証券会社の経営不振が起こると日本の金融不安が大きくなります。資産運用では複数のサービスを利用して運用してリスクを分散させるのが基本です。

Apple銀行でも全額の元本保証をしているわけではなく、日本でサービスを開始したとしたら1,000万円まででしょう。何らかの理由でApple銀行が倒産したら残りの資産は失われるリスクがあります。

ただ、銀行や証券会社の経営状況が悪くなると、他の投資をするか不安になります。Apple銀行以外の資産運用について深刻に考えなければならない状況が生まれるでしょう。

日本円の現金価値の低下

日本で金融不安が起こると世界の投資家が日本円を手放してリスクを回避します。日本円の現金価値が低下することにもなりかねません。

注意

Apple銀行の高金利で資産を増やしているつもりでも、物価高になって実質的な資産価値が上がっていない状況が生まれるリスクがあります。

もしApple銀行が高金利を設定して日本進出した場合には、このような事態にも備えることが重要です。

Apple社の影響力を考えた資金運用の対策

Apple社が銀行サービスを日本に提供したとしたら資産運用の形が変わる可能性があります。Apple銀行の日本参入時点の金融動向を追うことが最も重要ですが、サービスの提供を開始した1週間後にはもう金融不安が始まる可能性もゼロではありません。今から安全性の高い資産運用を始めておいた方が安心でしょう。

ポイント

金融不安になって日本円の価値が下がったとしても現物資産の価値は変わりません。安定して価値が高まっている金は現物資産として優れています。

金だけにこだわる必要はありませんが、安全性の高い現物資産を優先して保有し、Apple銀行の参入に備えておくのがおすすめです。

Apple社に限らず、GAFAMが再び銀行サービスを始めて対抗する可能性もあるので対策をしておきましょう。

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まとめ

Apple銀行の登場によって世界には激震がありました。高金利の普通預金のサービスを、大手ゴールドマン・サックスとの提携でApple社が提供したら消費者が集まるのは明らかです。

1週間で10億ドルも預金があったことを考えると米国金融に与えた影響が大きいのも明白でしょう。Apple銀行の日本参入があったら金融不安が起こり、日本円の価値が下がるリスクがあります。

それほどのインパクトがあるかどうかはApple銀行の日本進出のタイミングによって違いますが、最悪のケースを考えて対策をしておくのがおすすめです。

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