ロシアがウクライナに侵攻してから、世界情勢の変化に伴って「有事の金」が買われるのではないかと考えて様子を見てきた方もいらっしゃるでしょう。
戦争の長期化が進む中、今が金の買い時なのか、売り時なのかを悩んでいる方もいるはずです。
ウクライナ情勢は今後の金価格にどのような影響を与えるのでしょうか。
この記事ではウクライナ情勢と金価格の今までの流れを踏まえて、今後の見通しを紹介します。
目次
ロシアによるウクライナ侵攻から半年が経過するも、収束の兆し無し
2022年2月24日にロシアによる宣言によって勃発したウクライナ戦争は半年以上経過した今でもまだ収束する兆しはありません。
世界的な非難だけでなくロシア国民による国内での抗議活動も活発に行われる中、ロシア政府は強硬な態度を取り続けてウクライナへの侵攻を続けています。
3月には停戦交渉が行われましたが、交渉が決裂してからはロシアの強硬な態度が強まっています。
ロシア政府は特別軍事作戦として国内の法的な統制を進め、戦争や侵攻などといった言葉を発する言論の自由も奪っています。
激しい国内弾圧と情報統制によってロシア国民も疲弊している状況がありますが、それでもプーチン・ロシア大統領は軍事行為を継続する姿勢を示しています。
ウクライナ侵攻後、地政学リスクの高まりから安全資産としての金価格は上昇、現在は高止まり
ウクライナ侵攻によって金価格はどのように推移してきたのでしょうか。
基本的には地政学リスクが高まったことにより、「有事の金」として金が買われて価格が上がりましたが、現在は高止まりになっています。
やや金相場が下がる兆しも見られてきているので、ウクライナ情勢の変化と金価格の関係について詳しく見ていきましょう。
ウクライナ侵攻が始まる以前の金価格
ロシアによるウクライナ侵攻が始まる前は金価格は1,800ドル前後を推移していました。
ウクライナ侵攻の1か月前に当たる2022年1月24日時点での金価格は1,849ドルでした。
コロナショックの影響を受けて、安全資産としての金の人気が高まり、2020年頃から金価格は上昇する傾向がありました。
金価格は米ドルの価値との関連性が高いのが特徴で、アメリカの金融政策による影響を大きく受けます。
2021年にアメリカで金融緩和縮小と利上げの対応によってインフレ対策をするのではないかと考えられたため、長期金利が上昇しドル買いの動きが強まりました。
それでも金価格は安定して1,800ドル前後を推移していました。
アメリカの金融緩和縮小による下落要因があるにもかかわらず、金が好調だったのは暗号資産の規制強化によるビットコインの大暴落の影響もあります。
ビットコインは「デジタルゴールド」と呼ばれるほどの安全資産として注目されるようになっていました。
金と同じように有事に買われる傾向が強く、コロナショックでも価格が上がっていきました。ただ、中国による禁止やテスラ社のCEO、イーロン・マスクの発言などによってビットコイン価格は暴落したのは、投資家の間では大きな衝撃が走ったイベントです。
当初は価格が暴騰して大きな利益を生み出せましたが、ビットコインは「デジタルゴールド」ではないハイボラティリティの資産だという認識が一気に浸透しました。
その影響で安全資産を求める投資家が暗号資産から金に資産を動かしたため、逆境にもかかわらず金価格の堅調さが維持されたと解釈できます。
ウクライナ戦争勃発直後の金価格
ウクライナ戦争が勃発するのではないかという懸念が浮上してきた時点から金価格は上昇を始めました。地政学リスクを考慮して早めに資産を動かす投資家が多かったからです。
戦争勃発の前日2月23日には1,906ドルになっていました。そして、ロシアによる侵攻開始後は金価格が急騰し、3月7日には2,043ドルに到達しています。
金価格が2,000ドルを超えたのは2020年8月以来で、いかにウクライナ侵攻による不安が大きかったかがわかります。
3月7日にピークに達してから停戦交渉が進められたため、1,925ドル前後まで金相場は下がりました。しかし、停戦交渉が難航する様子が見られてから再び金が買われて1,986ドルまで上昇しています。
停戦交渉が決裂すると戦争が長期化するリスクが高いと考えられたからです。
4月16日に金価格がピークに達した後は1,850ドル前後に戻ってきました。ウクライナ侵攻が始まる前よりも50ドルほど高値で安定した推移をしています。
半年が経過した状況での金価格
ウクライナ侵攻から半年が経過し、金価格は不安定な状況になってきました。ウクライナ戦争が長期化するにつれて、投資家の視点がウクライナ情勢からアメリカの金融政策にシフトしてきたからです。
アメリカは金融緩和縮小を続けているため、ドル買いの傾向が強まっています。その影響で金価格が低下して1,800ドル弱を推移しているのが現状です。
金の価格についての不安が生まれているのにはもう一つ理由があります。長期戦になることでロシアの抱える金が売られる可能性です。
ロシアは建国後、不況対策として金を売る方針を立てて財政を立て直した経歴があります。経済的な余力が生まれてからは再び金を購入して1,000トンの金を保有しています。
戦争の長期化によって経済力が課題になった際に売られるのではないかという懸念があるのは確かでしょう。
ただ、ロシアには世界各国による金融制裁が行われています。ロシア中央銀行の米ドル取引は全面禁止になっていて、米ドル建て決済が基本の金取引はできない状況です。
基本的にはロシアによる金の売却に対する懸念はないというのが一般的な見解になっています。
半年が経過した現在ではウクライナ戦争勃発前に比べるとやや金価格は下がっていますが、2019年当初は1,500ドルだったことを考慮すると高値を維持しています。
ただ、ウクライナ情勢の影響を受けて価格が上がる傾向が弱まり、横ばいを続けているのが現状です。
この先の見通しは?
ロシアのウクライナ侵攻の長期化に伴って金価格はどうなっていくのでしょうか。ウクライナ戦争はまだ終わる兆しがまったく見られていません。
アメリカやドイツなどの先進国によるウクライナへの軍事支援が継続されていて、戦争状況は今後も深刻化するリスクがあります。
ただ、ロシアの経済状況も厳しくなってきています。9月17日のインドでのモディ首相との会談ではプーチン大統領は早期停戦に努めることを言及しました。
地政学リスクの低下によって金が売られて価格が下がる可能性が生まれています。
しかし、ウクライナ侵攻直後の停戦交渉は決裂したという事実があります。ロシアとウクライナの軋轢は大きいので、ロシアが懐柔する方針を立てたとしても交渉が成立するとは一概に言えません。
金価格が安易に下がるとは言えない状況です。今後の金価格はウクライナ情勢の急変によって大きく変わる可能性があります。
ただ、安定時期に入っているため、停戦交渉の成立のような大きなイベントがない限りは金価格を激動させる原動力にはならないでしょう。
まとめ
ロシアのウクライナ侵攻によって金価格は一時的に高騰しましたが、今は安定時期になっています。
今後のウクライナ情勢について気に掛けることは重要ではあるものの、金価格に大きな影響を及ぼすようなイベントはあまり多くはありません。
停戦や他国による軍事介入などのように地政学リスクを左右するイベントがあったときには金価格が激動する可能性はあります。
しかし、基本的には影響力が小さいと捉えて、中長期的な視野で金投資を始められる状況になっています。
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